私の知らない妻、その35、澤田統括部長について調べて貰う事にしたのです
私の知らない妻、その35、澤田統括部長について調べて貰う事にしたのです
『あなたが寝室に運んで脱がしてくれたのかな?とも思っていたの‥ 』
私は再び意地悪な気持ちが沸き上がり、妻を茶化しました。
『アハハッ‥やっぱり俺が寝室に運んでやれば良かったかな?
スーツから下着の果てまで脱がして、
裸で寝かし付けてやれば良かったね‥ 』
『イヤだわ‥あなた‥
裸だなんて‥風邪をひかせるつもり? 』
笑顔で私の言葉に答える妻でしたが、
その目は笑っていないように見えました。
ガウン姿の妻はソファーから立ち上がり、
『さぁ‥御飯の支度をしなくっちゃ‥
昨日、御飯を炊く準備も何もしないで寝てしまったから‥。
あなた、今朝はパンとサラダ…
それと作り置きのシチューで良いかしら?』
取り敢えずの不安が払拭された妻は、機嫌良く言いました。
そんな妻に、私は作り笑顔で
『いいよ… 腹ぺこだ。 早めに準備頼むよ… 』
と答え、徹夜明けの体に喝を入れようとシャワーを浴びに向かいました。
私がシャワーを浴びた後、妻も慌ただしくシャワーを浴びて、
その後に二人で囲む朝の食卓では、敢えて私は妻に厭味を言う訳でも、
疑問をぶつける訳でもありませんでした。
あのボイスレコーダーから分かった事もあれば、
益々分からなくなった事もありました。
私は私なりのやり方で真実を調べ上げ、
澤田統括部長に対して、妻悠莉子に対して、
キッチリと落とし前だけは付けよう…と決意していました。
妻悠莉子が仕掛けていたボイスレコーダーの謎など、
解明しなくてはならない事がたくさんあります。
あのボイスレコーダーの中には、
妻のSOSとも受け取れる物もありました。
【救ってやりたい…】
長年連れ添った夫婦の情から素直にそのようにも感じています。
しかし余りにもまだまだ見えていない事が多過ぎるのです。
この日の正午、早速私は新たな行動を開始したのでした。
いつもなら、仕事に向かう時間が別々の私達夫婦なのですが、
今朝は妻が妙に気を使ったのでしょうか?
私に対しての後ろ暗さを感じている事も無縁では無かったのでしょう。
この日は珍しく仲良く一緒に御出勤?と相成りました。
途中で妻と別れ、職場に向かう私は、
徹夜で鉛のように重く感じる体を引きずるようにして出勤しました。
二日間の有休明けの私ではありましたが、
私の所属している部署は、比較的融通の利く部署である事を
良い事に11時過ぎには職場を抜け出して、
私は一旦自宅に戻り、今後の方策を練る事にしました。
取り敢えず【澤田統括部長】の事を調べ上げるしかない…。
どんな事でも良かったのです。
家族構成、職場内での評価、評判、資産状況…。
どんな人間にも触れられたくない弱みはある筈です。
しかし、私は調べようにも素人。
友人、知人などにはとても相談出来る内容ではありませんから、
餅は餅やとばかりに専門の業者に依頼する事にしたのです。
私はインターネットで調べた、大変評判の良い
、大手探偵社に澤田統括部長について調べて貰う事にしたのです。
探偵社にこちらの希望する調査内容を伝えると、
調査内容により事細かな料金設定になっている旨を伝えられました。
一般常識からすれば、かなり法外な料金ではありましたが、
この時の私は《澤田憎し》で固まっていた事もあり、
その後の探偵社との交渉の過程で、
ある程度納得出来る料金が提示された事もあって、
私は改めてこの探偵業者に澤田統括部長の調査を
依頼する事にしたのです。
個人情報保護について様々な事が言われている昨今ではありますが、
この探偵社の担当者が私に言った言葉が忘れられません。
【この程度の内容でしたら、
5日も有れば十分過ぎる程の情報が得られる筈です。
当社は儲けの為にダラダラ調査期間を引き延ばす事は一切しません。
上手く行けば3日程度で調査が終了する事も有り得ます。】
さすがはプロの自負だと関心もしましたが、
逆に言えば、私などの個人情報も硝子張りなんだろうと
自覚させられた言葉だったのてす。