私の知らない妻、その31、私の中でこの空白の15分の記録
私の知らない妻、その31、私の中でこの空白の15分の記録
私は妻のボストンバッグに仕掛けた、
例のボイスレコーダーの続きを再生していました。
それは、どんな小さな事でも把握していたい…
鬼畜のような澤田統括部長を潰し、牽いては、妻を助ける材料としたい…。
そんな気持ちからの素直な行動でした。
私はリビングで、時が経つのも忘れ、
ただひたすらボイスレコーダーの再生音を確認していました。
しかし、私の思惑とは裏腹に、この水曜日の行動には、
新たに何も材料らしい材料は出て来なかったのです。
結局、ラブホテルを中座した澤田統括部長は
妻に告げた予定時間を遥かにオーバーしてから戻り、
妻と中出しセックスをするような時間などは無いままに、
急ぎチェックアウトし
、妻と共にミーティング会場に向かったのです。
そして、ミーティング終了後は、
澤田統括部長の上司である赤澤支社長、
亀田専務、各地区のエリアマネージャーとの懇親会へと
場所を変え、賑やかな宴は日付けの変わる深夜まで、
二次会、三次会と続いていました。
その場所から伝わる、
賑やかなで楽しそうに談笑する声と延々と続くカラオケ‥。
イヤホン越しに聞き取れる会話からは何一つ、
澤田統括部長と妻を結び付ける物は無いように感じられました。
やがて、そろそろ頃合いとばかりに、
誰とも知れぬ音頭で宴はお開きとなり、
妻は他の地区のエリアマネージャー達と宿泊先の
ビジネスホテルへと戻って行ったのです。
元々、アルコールに弱い妻は、
周囲に対する気配りから解放された安心感からなのでしょう、
【バサッ‥ バサッ… 】
着ていた衣服を脱ぎ捨てるような音と、ほぼ同時に
【スゥ‥ スゥ‥ スゥ‥】と、
気持ち良さそうに寝息を立ててしまっているようでした。
この後に、澤田統括部長によって、
妻の部屋がノックされる事も、
妻の携帯が鳴らされる事も無かったのです。
ボイスレコーダーを聞く私は、何やら拍子抜けする思いでした。
翌朝、推定7時に妻の携帯が鳴りました。
妻は、眠たさが残る気怠そうな声で電話を受けました。
『はい‥ おはよう‥ ‥えっ?今から?無理よ、
8時には他の皆さんと朝食をご一緒する約束なんだから‥ ‥
私が居なければおかしな話になってしまうじゃない?‥ ‥
‥えぇっ?今まだ身に着けたままよ‥ ‥
昨日、疲れていたし、酔ってそのまま寝てしまったから‥ ‥‥‥
分かったわ‥‥』
おそらくは澤田統括部長からの電話だったのでしょう。
ボイスレコーダーから伝わる妻の声は、何かを約束したように感じられました。
妻は受話器越しの会話を終えた後に、深い溜め息を漏らしました。
『はぁ‥ ぁ ‥ぁ‥ ‥』
どれぐらいの沈黙が続いたでしょうか‥
ベッドのスプリングが鈍く軋む音と共に妻が起き上がる気配がして
、バスタブに勢い良くお湯を溜める音が聞こえて来ました。
一時間後に支度を終えた妻は、
他の地区のエリアマネージャーさん達とホテル内の
レストランで朝食を済ませて、マネージャー会議へと向かいました。
その後、マネージャー会議は滞りなく行われ、
会議が終了して現地で解散となったのは
15時を少し回った頃の模様でした。
この間、私には、一つだけ気になった事がありました。
昼食時間の時に、妻が亀田専務から呼び止められ、
15分程何やら話をしていたようなのです。
他のエリアマネージャーさん達とテーブルを
囲んで食事をしている時に呼ばれたのです。
昼食会場の違うテーブルに呼ばれて話をしていたのでは?
と想像出来るのですが、妻は私がボイスレコーダーを
仕込んだバッグを他のエリアマネージャーさん達と食事を
していたテーブルに置いたままだったようなのです。
ですから妻が亀田専務に呼ばれた時の会話内容については、
一切分からなかったのです。
しかし、私の中でこの空白の15分の記録が妙に
気になった事は確かなのです。
『お疲れ様でした‥』
『どうもお疲れ様‥』
木曜日の会議終了後、口々に挨拶を交わして帰宅の徒につく面々。
その時、妻の携帯が鳴りました。
【♪‥♭‥♪~♭♪~♪~♭♪‥】
『分かりました‥ 』
手短かな応答で電話を切った妻は、
雑踏の賑わいの中に紛れて行きました。
10分程も経ったでしょうか、
行き交う人々の喧噪が急に薄れ、
妻が人通りの少ない場所に出た事がイヤホン越しに
確認出来ました。
【カッ‥ッ‥カッッ‥カッ‥】
足早に何かに近付いて行く妻の気配。
【ガチャッ… バタン‥ン】
『待った?… 』
『いや‥僕も今着いた所だよ… …』
そこで妻を待っていたのは澤田統括部長でした。
『しかし参ったな‥
昨日は昨日で、せっかくこれからって時に仕事が入るし、
夜は夜であの流れだ… まったく寸止め地獄だよ… 』
まるでそれが妻のせいでもあるように訴える澤田統括部長。
『いやだわ‥私のせいじゃ無いわ。』
『これから朝の段取り通りにゆっくり‥と言いたいんだか、
急に亀田専務から呼ばれて‥
これからすぐに会社に戻らなくてはならないんだ…
帰る時間を2.3時間遅らせる事は出来ないかい?
勿論、送り届けるよ。
あの僕が贈ったセクシィなランジェリー姿の
悠莉子を抱きたいんだ。』
微妙な空気が車内から伝わり、
『‥ それは無理だわ。
私は独身者じゃ無いんだからぁ…
無理をしないからバレずに来れたんでしょ?
貴方にも分かっている事でしょう?
無理は言わないの‥。』
『はぁ~ ‥それは分かってはいるさ。
でもこんなになっているコレはどうするんだい? 』
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