スケベ妻、その42、場あたり的な優しさが、妻を増長させ、結局、妻の病気?が、ほぼ完治するまでは10日間程度を要した。
山田君と私は結託し、
[設備の調った専門の場所で消毒しなくては、
あのボンデージとディルドは使えない‥せっかく感染症が治癒しとも再び、
再発を繰り返すのだ]と
言い聞かせ、一時[魔性のボンデージ]を取り上げた。
その間の妻は、事ある事にイラ立ち、感情の起伏が激しく‥
ある意味、見ていて不憫でさえあった。
妻にしてみれば、[これから]と思う事が、沢山あったのだろう‥
妻は、自分が変わりゆく姿に酔い知れていたのかも知れない。
[夫婦二人の平穏な生活‥子は無くとも、不自由の無い生活‥]
私は、妻は満たされていて幸せなのだろうと信じて疑わなかった‥
しかし、そんな一方的な考えが、
妻から発っせられていたシグナルを見逃していたのかも知れない。
淋しかったのだろう‥
耐えていた事もあったのだろう。
私の[仕事]の名を借りた傲慢さに、心が病む部分もあったのだろう。
そんな時にスポーツクラブで過ごす時間が、妻の気持ちを楽にし、
性の満たされ無い要素をも、発散していたに違いないのだ。
善し悪しは別にして、[あのボンデージ、ディルド]は、
そんな満たされない日々、見えない重しを、
解放するアイテムだったのだ。
そして、あの[伝説の竿師、藤田]の存在も‥
先日、西島氏が、私に語ってくれた事柄を思い出しながら
改めて思う事もあった。
[これ以上、妻との距離を離す訳にはゆかない。]
イラ立ち、理不尽さを剥き出しにするような妻に対して、
腫れ物にでも触るように接してしまっていた。
しかしそれは逆効果に過ぎなかった‥
私の、場あたり的な優しさが、妻を増長させ、
勘違いさせてしまったのだ‥
あの藤田に抱かれた日から数えて二週間目の金曜日、
私は滋賀の栗東に営業に出掛け、仕事が長引き、
帰宅したのは夜の10時を過ぎた頃だった。
エレベーターを降り、自宅のドアノブを回したのだが、
鍵が掛かっている。
[ピンポーン‥ピンポーン‥ピンポーン‥]
返事が無い‥
[寝ているのか?‥それとも‥不在なのか?]
鍵を開けて、中に入った‥
「おーい?居ないんか?ただいまぁ‥」
返事は無い‥気配も無い‥
こんな時間なのに、妻は不在だった。
私は、ふと、思う処が有り、
先日、妻が買った下着の有無を調べるべく、
妻の箪笥の引き出しを開けた。
箪笥の引き出しを開けて中を調べた私は、先日、妻が買った、
数点の下着の中でも、
一際目を引く下着が見当たらない事に気が付いた。
黒地に豪華な朱とゴールドの刺繍をあしらった、
ブラジャーとTバック、ガーターのセットが無いのだ…
今まで、妻が身に着けた事も無いゴージャスでエロティックな下着‥
嫌でも、目についてしまったのだ。
違う場所にしまい込んでいるのか?と、
クロゼットの中から、洗濯機の中まで探したのだが、見当たらない
苛立ちと、欲求不満が募っていた妻なのだ。
[これから…]というタイミングで何も出来なかったのだ…
体調悪化が、それを許さなかったのだ。
それらが完治した、このタイミングでの不在に、私は不安がよぎった。
[一体、何処に? 連絡も入れずに何をしているのだ?」
私の心配を、知ってか知らずか、妻が帰宅したのは日付が変わる頃だった。
「パパぁ、だだいまぁ。
スポーツクラブの、お友達が快気祝いしてくれたねん。
食事して、カラオケしてきたんや~。
楽しかったわぁ。 」
機嫌良く語る妻。
「出掛けてるなら連絡ぐらいせんとアカンやろ?心配するやないかい。
体調悪うして、治ったばかりやろ?」
「ごめんなぁ‥こんな遅うなるなんて思わんかったねん‥」
妻は悪びれる様子も無く舌を出した。
「ウチ、飲むのも、カラオケも久々で楽しかったけど、
疲れてしもうた‥寝るな‥おやすみなさい。」
妻は、寝室へ行ってしまった。
あれから、私達は寝室を別にし、私は衣装部屋で寝ていた。
私は胸の中のモヤモヤが晴れぬまま床についていた。
翌朝、休日という事もあり、私は遅い起床だった。
リビングで、テレビを見ながら、妻は妙にご機嫌な感じで、
「おはよう‥良く寝てたなぁ‥朝ご飯食べるやろ?」と、
キッチンへ立った。
私は顔を洗うべく洗面所に行った。
顔を洗い、何気なく洗濯機に目をやった。
すると洗濯機から何やら黒い布地がはみ出し‥垂れていた。
[何だ?ストッキングか?だらし無い‥]
私は洗濯漕を開け、はみ出た布地を放り込もうと手に取った。
それは、ストッキングだった‥何かが、ぶら下がっている。
何とあのガーターベルトに装着されて脱がれたストッキングだったのだ‥
私は無意識に洗濯漕の中を漁った。
そこには、黒いTバックが裏返しのまま、丸められ放り込まれてあった。