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開花する妻、その12、奥さんを自分の欲求を満たす為の道具?

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開花する妻、その12、奥さんを自分の欲求を満たす為の道具?

それからの私達は、ことあるごとに言い争いが増えて行きました。

しかし、私自身は情けないと思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、

心の奥底では妻を嫌いになっていた訳ではなかったように思います。

同じように妻も少しはそんな思いはあったのでしょう。

お互いに自分の言動でこうなってしまったと痛感していたからです。

けれど現実は、お互いに歩み寄ろうとして行動や態度で示しても

相手が今までのような言動と違うことに妻も私も、

苛立ちを感じてそこから言い争いが始まるのでした。

そんな頃、上の娘は友人と旅行に、下の子は部活の合宿へと

同じ日に家を開ける日がありました。

いつもなら子供達がいるもので、

なんとかぎこちなくとも会話をしていた私達でしたが、

その日は私が仕事から帰ってきても重苦しい空気が立ち込めていました。

とくに会話もせずに、夕飯を食べてお互い風呂に入り、

ただテレビを見ている二人でしたが、

ドラマか何かだったと思うのですが、

親が離婚を考えている子供が両親に涙で訴えるシーンがありました。

妻はその画面を見ながら涙しているのが、私にはわかりました。

妻も私と同じようにそのシーンを

自分にダブらせて見ているんだと思いました。

「なぁ~ ママ彼とはどうなっているんだ?」

と重苦しい雰囲気の中私は妻に問いかけました。

ドラマを見て涙した妻は鼻をすすりながら「どうって?」

と妻が私にそう言いました。

「俺と彼が偶然街で逢ったのは知っているんだろ?」

「・・・・うん。聞いた」

「そっか。で彼とは?」

「時々電話で話しをするくらいかな・・・」

「彼は俺からママを奪うって言ってたよ」

「・・・」

「ママはどうなんだ?」

「・・・わかんない。そんなことわかんないよ」

「何がわからないの?」

「私がどうしたいのかが・・・」

「逢ってはいないのか?」

「逢おうって言われるけど・・・逢えないよ」

「どうして?」

「わかんない・・・」

妻は俯き加減でそう言いました。

「俺は正直、ママを許せないって気持ちがないとはいえないけど

俺自身のせいで、こうなったと思っている」

「・・・」

「勝手だけど俺はママとは離婚なんか考えていない・・・」

「・・・」

妻は何も言いませんでした。

「一度彼と逢ってみれば?俺もママが彼に逢いに行って

自分自身の気持ちを考えてみるから」

「・・・」

妻は何もいわずに、テーブルの周りを整理して

「寝るね」と言い残し寝室へと行きました。

また妻に彼に逢いに行けと言ってしまった。

妻は私のその言葉をどう受け取ったのだろうか?

私は自分自身、性癖を満たす為に彼と逢えと言ったつもりは

ありませんでした。

妻自身、彼と逢う事を避けているからには

それなりの理由があるからだと。

それが私に隠れて逢うことを意地になってしなかったのか、

それとも逢ってしまうともう私の元へ戻れなくなってしまうのか・・・

私はこれからの二人の関係がそれによって

すべて判断されると思ったからでした。

次の週の週末に私が仕事をしていると妻からメールがありました。

「今日仕事が終われば連絡ください。

いつものお店で少し話がしたいもので」と書いてありました。

仕事が終わり妻に電話して、いつもの店へと行きました。

私が店に着いた時には、まだ妻は来ていませんでした。

けれど店に入って席についた頃に妻はやって来ました。

「話って?」と妻に聞き、ビールと少しのつまみを注文しました。

「ごめんね。疲れているのに」

「いいよ。で話ってのは?」

「うん。○○君と一度冷静に話をしてくれないかな?」

「なんで?俺があいつと話をしないといけないんだ?」

「パパはどうしてそんな言い方しかしないの?」

「俺が話をする理由なんてないじゃないか」

「電話でいいから一度話をしてよ!でなきゃ私、

どうすればいいかわかんないの」

妻は目に涙を浮かべて私を見てそう言いました。

「わかった。何を話せばいいのか、

わからないけどママがそう言うんだったら」

「・・・」

妻はそう言ってバックから携帯を出して電話をかけました。

「もしもし? ううん。今主人といるから・・・

少し主人と話してくれる?

うん。うん。じゃぁ代わるね」

妻はそう言って私に携帯を渡しました。

「もしもし」

「もしもし。何か私にお話でも?」

「いや。そっちが話があるんじゃないか?

妻にあなたと話をしてくれと言われたもんで」

「そうですか。じゃぁわかりました。短刀直入に言いますが、

奥さんと別れていただけませんか?」

「は~?何を言ってるんだ?」

「いえ。奥さんからすべてお話を聞かせていただきました。

あなたは最低ですよ。

私が奥さんと逢ったのもあなたの指示なんですよね?

それだけでも私には理解できませんが、

あなたが指示したのに奥さんを攻めるなんて。

あなたは奥さんを自分の欲求を満たす為の

道具にしているだけじゃないですか?」

「・・・」

「だからあなたには奥さんを幸せにできるとは思えません。

それはあなた自身が一番お解かりではありませんか?

私は前にもお話しましたが、今奥様を支えているのは私です。

あなたではありません。おわかりでしょ?」

私は彼の言う事に返す言葉もなく電話を切りました。

「・・・・・ママ?・・・ママの好きなようにすればいいよ。

明日にでも彼のところへ行けばいい。」

「パパはそれでもいいの?」

「仕方ないさ。ママがそうしたければ」

その後二人に長い沈黙が続き他の客がワイワイと

騒ぐ音だけが耳に入って来ました。

私がただ肩を落とし煙草を咥えていると、

意を決したように妻は口を開きました。

「パパ?・・・明日彼に逢ってきても・・・いいかな?

 泊まりに・・・なっても・・・いいかな?」

妻は言いにくそうに私に問いかけて来ました。

「・・・」

「ダメ?」

「わからない・・・今の俺には」

「私○○君からパパと別れろって言われたの・・・」

「・・・」

「けど・・・自分がわかんないの・・・」

「・・・」

「明日彼と逢って自分の気持ち考えてみる・・・

もし私が泊まらずに帰って来た時は、

私を許してくれる?」

「・・・」

「もし・・・もし・・・泊まって帰って来たときには・・・

私を追い出してくれれば・・・いいから・・・」

「・・・」

私は妻に何も言えずにビールを一気に呑み店を後にしました。

次の日の土曜日の朝、妻は彼に逢いに行きました。

その妻の後ろ姿を何も言えずに見送る私でした。

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