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妻のヌード撮影、その8、結び目が解かれた帯は一本の紐となって足元に落ちていきます。





妻のヌード撮影、その8、結び目が解かれた帯は一本の紐となって足元に落ちていきます。

妻と三上氏が控え室に下がっていくと、

高島氏は慌ただしく次の撮影の準備をしています。

床には毛の長い白い絨毯を敷き詰め、

装飾品もシンプルなもに変えていきました。

あっという間に先ほどのスタジオと

はまるで違う雰囲気になっていました。

私たちはただ黙ってそれを見ているだけでした。

あの控え室の中で、最初に妻の裸を見るのは三上氏なのか。

私の心の中で小さな嫉妬心がわいてきたのと同時に、

それ以上に興奮する思いがありました。

10分が過ぎ、15分が過ぎてもなかなか妻は

控え室から出てきませんでした。

高島氏は一つも慌てる様子もなく、静かに準備をすすめています。

控え室に入ってから20分以上が過ぎた時、

突然そこから三上氏だけが出てきました。

三上氏は高島氏のそばに行くと、

こちらには聞こえない声で耳打ちをしていました。

高島氏はそれをうなずきながら聞き終わると、

ゆっくりとこちらに顔を向けました。

「まだ奥様の決心が揺らいでいるようです。

初めてのモデルさんにはよくあることです。

もう少しお待ちください」

高島氏はそう言うと三上氏と共に

妻のいる控え室へ入っていきました。

高島氏はその状況をわかりやすく説明してくれました。

横に座っている美佳さん夫妻は、

少しがっかりした表情をして夫婦間の会話をしていましたが、

私にはそんな余裕はありませんでした。

≪妻が拒否している!!≫

私は妻の今の気持ちを思うと激しく胸が締め付けられました。

刹那と表現するのはまさにこの時の私の気持ちです。

切ない気持ちが込み上げてきて今にも嘔吐しそうな気分でした。

≪やはり夫として止めるべきだったのか?≫

確かに今回の話は妻自身がヌード写真を

撮ってみたいと私に打ち明けて始まったものだったが、

私は純粋だった妻の気持ちを裏切り、

自らの性的な欲求を今回の撮影に託してしまっていました。

30歳を向えたばかりの妻は、

ひっそりと記念の写真を残しておきたかったにすぎなかったのに、

美佳さんのご主人である信吾さんまで同席させるように仕組み、

さらに私は妄想の中で、撮影中に他人に

抱かれ悦びの表情をする妻を想像までしていました。

そんなことあり得ないのに。

私は激しく自分を責め続けました。

なんて自分は不純な人間なんだと。

そのことで、妻は今苦しんでいるんだ。

私は頭の中で延々と自分をののしり、責め続けていました。

高島氏が控え室に入ってから10分以上過ぎた頃だったと思います。

≪止めさせよう!

今妻を助けられるのは夫である自分だけじゃないか!≫

私はそう言い聞かせると、意を決して席を立ちました。

それとほとんど同時に控え室のドアが開き、

中から高島氏、三上氏に続き、

ブルーのバスローブに身を包んだ妻が出てきました。

≪あっ!≫

私は心の中で叫んでいました。

三上氏の後をうつむきながら出てきた妻は、

スタジオに入る時に顔を上げました。

その表情は清楚で、清らかで、

凛とした美しさがみなぎっていました。

三上氏は妻の前にしゃがみこむと、

妻が穿いていた部屋履きを受け取りました。

バスローブの裾からは、妻の真っ白い生足が伸びています。

その素足はやわらかい絨毯を一歩一歩踏みしめ、

妻はカメラの前に立ちました。

三上氏が妻の髪などを治すと、

すぐに高島氏のカメラがシャッターを切りました。

さっきとはうって変わって、

高島氏は無言のまま真剣なまなざしで妻にカメラのレンズを向けます。

バシッ、バシッと大きなストロボの音がスタジオ中に響いていました。

「それじゃ敦子さん、バスローブの帯をほどいて」

高島氏の声は、この日一番低い声で響きました。

高島氏が妻を見つめてうなずくと、

妻もそれに応じてコクリとうなずきました。

こわばった表情のまま、

妻は震える手をバスローブの帯の結び目にもっていきましたが、

なかなかそれをほどくことができませんでした。

高島氏は静かに三上氏に目配せをすると、

三上氏はそれにこたえ妻の前に行きました。

「失礼します」

三上氏の手が妻のバスローブの帯の結び目にかかります。

「自分で脱ぎます」

妻の前でひざまずく三上氏の手を制した妻が、はっきりと口にしました。

「失礼しました」

三上氏がそう言って静かに下がっていくと、

スタジオにいた全ての人間が妻の次の行動に注視しました。

妻の指先に力がこめられると、帯の結び目はやわらかくふくらみ、

やがてタオル地がこすれる音がしたのち、

結び目が解かれた帯は一本の紐となって妻の足元に落ちていきました。
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