先生と妻、その23、幸せよ、貴方、、今度は私が守って見せるわ、
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先生と妻、その23、幸せよ、貴方、、今度は私が守って見せるわ、
私は、我が家から数十メートル離れたゴミ捨て場で、
堀田にかけていた携帯電話を閉じました。
私の決意は、ゴミ捨て場に捨てられているそれを見た時、
固まったと言っていいでしょう。
男が妻に残していった、アナル挿入具が、
バラバラに壊されて捨てられている。
妻がやったんだ。
妻のアナル・・・絶対に渡すものか。私のものだ。
私の内側にもこんなものがあるのか・・・私は驚いていました。
私の中で、恐ろしい顔をした野獣が牙を剥いているのです。
私の内側に混在する、男に爪を向ける野獣と、妻への感情。
妻を幸せにしたい・・・私がっ!あの男では決してないっ!私だっ!
『可哀想な人ぉっ!』
『恨んでなんかいなかったのにぃっ!』
妻は男にまたがり腰を振りながら、そう叫んでいた。
その時私は、妻の本当の姿を見たような気がしたのです。
妻が叫んだ言葉は、初めて聞いた言葉ではなかった・・・。
妻は、私との結婚生活で、自分の生い立ちを少しずつ話してくれました。
そして決まって、妻の両親のことに行き着くのです。
暴れ者で酒乱で、金を持ち出すギャンブル狂いの父親。
哀れなほどその父親の言いなりで、殴られてばかりいる母親。
学校もまともに出してくれなかった両親。
病気で疲れきっていた母親は、結婚の報告をした後、
急に亡くなってしまった。
私が会う前だった。孫の顔を見せたかったのにと、妻は葬式で泣いた。
その時、父親はいなかった。
多額の借金を家族に残して、数年前に失踪していたのだ。
水商売でその借金を半分以上返済していた妻は、私と結婚してからも、
私に謝りながら、私の給料から返済していた。
自分の家族に不幸の苦しみの原因を作った父親。
その父親の話になると、妻は不思議と、穏やかな顔になった。
そしてこう言うのです。
『父は、可哀想な人なの・・・恨んでなんかいなかったのに、
何処かに行ってしまって・・・孫の顔を見たら、
変われるかもしれないのに・・・何処にいるのかしら?可哀想な人・・・。
でも、こんな気持ちになれるのも、あなたと結婚して、健太を産んで、
幸せな家を持てたからだわ。
有り難うあなた。私は今幸せよ。
あなたのおかげで父の借金も全て返せた。
あなたに何かあったら、
今度は私が、守ってみせます。何をしてでも・・・』
妻は、私のどうでもいい、社会的立場を守るため、
あの男に肉体をむさぼられだした。
そしていつの間にか、自分の暗い過去にも貪られている。
あの男に、父親の影を見ているのだろうか?
私を守るため、可哀想な父親を哀れむ心で、女の肉体をあの男にぶつけて・・・
妻の肉体はもう限界に違いない。妻はもう、壊れてしまう。
私は、もう一度我が家の灯りを見てから、
家とは反対の方向に歩き出しました。
堀田が話していた、駅の近くの飲み屋街を、
離れたタクシー乗り場から見ていました。
そして、一軒の飲み屋から堀田が出てきた。
続いて、あの男も、出てきた。
私は離れて、しかし決して目をそらさず、二人の後を追いました。
堀田が男に頭を下げて、男と別れた。タクシーをつかまえたのです。
男は堀田を見送ると、また飲み屋街を歩き出した。
そして、雑居ビルに入ったのです。
ビルの中のスナックにでも入るつもりなのだろう。
私はエレベーターが8階で止まるのを確認すると、
1階に降りてきたエレベーターに乗り込みました。
そして、8階を押した。
チンッ・・・エレベーターのドアが開くと、
私はポケットに手を入れました。
中に忍ばせているものを握り締め、そして、呆然としました。
8階の飲み屋やスナックの看板は、どれも明かりがついていない。
それどころか人気がまったく感じられなかったのです。
この階の店はすべて、潰れている。
廃墟の階だ。廊下の奥の非常階段のドアが半分開いて外の夜が見えている。
私はドアに歩いていき、外の様子を伺おうとしました。その時・・・
背後に人が立った気配がしたのです。背筋に冷たい汗が流れました。
追い詰められようとしていたのは、私の方かも知れない・・・
そう思って鳥肌が立ちました。
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