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私の知らない妻、その39、この笑顔の裏側に











私の知らない妻、その39、この笑顔の裏側に

塔子に聞きたい事があって、

塔子に調べて欲しい事があって電話した私でしたが、

いざ塔子の声を聞くと、

話の内容が内容なだけになかなか切り出せない自分が居ました。

『本当、どうしたの?

ねぇ‥言いなさいよ‥

あぁ~イライラするなぁ‥

お兄ちゃんは昔からそう‥ 何なの? 切るわよ!』

『‥ 分かった‥ 分かった‥ 話すから‥そんな急かすなよ‥

実は悠莉子の事なんだ‥

塔子‥お前さ‥あいつから何か聞いていないか?』

『悠莉子がどうしたの?何か‥した‥の‥?』

ほんの少し‥ほんの少しでしたが携帯の向こう側の塔子の声に

変化があったように感じました。

『お前さ‥何か知ってるなら隠さないで言えよ‥

もし‥後々になって何か塔子が知っていたのに俺には

隠していたとかなら‥

俺はお前を‥塔子を許さないよ‥

‥洒落にならない事に‥笑えない事になってからじゃ遅いだろ?‥』

私にしては珍しい強い語気に驚いたのか、塔子は一瞬の間を置いて

『うん‥分かったわ‥ 話す‥話すわ‥

お兄ちゃんの期待に添える話かどうかは分からないけれど…

でも‥電話だと話が長くなりそうだし‥明日そっちに私が行くわよ‥

直接会って話した方が良さそう‥土日休みだしさ‥。』

私は塔子と待ち合わせの時間を決めて電話を切ったのです。

その後、職場に戻った私は、心ここにあらずといった感で

仕事をこなしながら、

先程の塔子との会話を思い出していました。

【塔子は必ず悠莉子の事情を知っている…

わざわざこちらに帰って来てまで私に話すという事は、

核心を突くような事までを知っているのかも知れない‥

しかし‥塔子ならば、この行き詰まった状態を

何とかしてくれるかも知れない…】 と。

探偵社に澤田統括部長の件を依頼し、

従姉妹の塔子に妻悠莉子の事で連絡を取る事によって、

どんな形であれ進展がある筈と、

私は14時過ぎに職場に戻ったのでした。

何しろ今朝までの段階では、

右を向いても、左を向いても悪い材料しか無かったのです。

私にして見れば、何も知しらずにいてピエロでいるよりは

出来うる限りの様々な情報を集めて事に当たった方が

余程割り切れると言う物だったのです。

この日の夕刻、私は仕事が終わった後に普段通りに真っ直ぐに

帰宅する気持ちになれませんでした。

昨夜から今朝にかけての事が、

私の足どりを重たい物にさせていたのです。

私は馴染みの居酒屋で2時間程、

時間を潰してから帰途に着きました。

マンションの自宅玄関を開けると同時に漂う香辛料の匂いが

妻が帰宅している事を教えてくれました。

『お帰りなさい…』

何喰わぬ表情のままで微笑む妻悠莉子。

【この笑顔の裏側に、澤田統括部長の巨根で

ヒィヒィとヨガリ狂いながら、

上の口と下の口両方から涎れを垂れ流す姿があるのだ…】

睡眠不足と居酒屋でしたたかに飲んだ日本酒が、

私の中の我慢と言うリミッターを外しそうになりましたが、

まだ時期ではないと必死に思い止まりました。

『どうしたの?…』

私の表情に何かを感じ取ったのでしょうか?

妻悠莉子の顔から微笑みが消え、不安げな視線を私に送りました。

私は、やや慌て気味に

『うん… 何でもないんだ… ゴメン…ただいまも言わないで…

少し飲んで来たんで酔ってしまって…。』

取り繕うように話した私は、

着替えて来る旨を伝え自室に向かいました。

妻は妻で微妙に何かに気付いてしまったのかも知れない…

今朝の私の妻に対する思わせ振りな言葉‥、

私自身が意識せずに取ってしまっている態度…。

ここで必要以上に警戒されて、用心され、

証拠隠滅でもされてしまえば元も子も無くなってしまうと、

着替を終えた私はリビングに戻り、精一杯の作り笑顔で言いました。

『昨日、俺も調子に乗って飲み過ぎたのかもな‥

軽く迎え酒でも飲めば治ると思ったんだけど、

かえって具合い悪くなってしまったよ。』

妻は私の様子を伺いながらも、その言葉に安堵したのでしょう。

少し呆れた表情で

『調子に乗って飲むから… ‥

あんなに私を酔わせた罰が当たったのよ‥お薬飲んだの?』

と、ローボードの薬箱から胃腸薬を取り出して私に手渡しました。










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