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妻の青春、その24、家内の存在の大きさ・有り難さを実感しました。

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妻の青春、その24、家内の存在の大きさ・有り難さを実感しました。

私は離婚の申し出ではなかったことに内心ホッとしました。

しかし、2日間外出とはどういうことなのか…

「そりゃあいいけど…外出って、旅行でも行くのか?」

家内はやや言いにくそうに続けました。

「旅行っていうほどのものじゃないけど…2日間家を留守にしたいの。

あなたと弘毅の食事は作れないけど」

「それはなんとかするさ。しかし…どこへ行くんだ?

川島君と…何か関係があるのか?」

家内はしばらく黙っていましたが、

顔を上げて何日振りになるのか私の顔を見ながら言ったのです。

「行き先は聞かないでほしいの。それと……

2日間私と川島君には連絡をとらないでほしいの」

2日間家を留守にする、しかもその間川島君と家内には連絡しない…

何をしようとしているかは誰でもわかります。

私は呆れてしばらく声が出ませんでした。

私が黙っていると家内が口を開きました。

「すごいわがまま言ってることはわかっているわ。

でも……行かせて欲しいの…」

家内の真剣な表情は何かを決意したようにも見えました。

しかし、夫としてこのままあっさりと行かすわけにもいきません。

「お前…何をしようとしているんだ?そもそもどっちが誘ったんだ?」

家内は表情を変えずに言いました。

「私から川島君を誘ったの、水曜日に会いたいって」

「もし…俺が絶対行かせないと言ったら…どうするんだ?」

家内は俯いてしばらく黙っていましたが、

頭を深く下げて言いました。

「行かせてください…」

行かせてください…か、

私はしばらく迷いましたが、このまま家内を引き留めたところで

我々夫婦の間はこのまま好転しないように思いました。

家内に行かないでくれと言うのも女々しくて自分が

情けないように思いますし、

もう勝手にすればいい思いました。

やや突き放すような感じで私は家内に言いました。

「もういい…好きにしろ」

家内はしばらく頭を下げたままでしたが、

ゆっくり顔を上げると言いました。

「ごめんなさい……木曜の夜には必ず帰ります」

「当然だろ」

そして水曜の朝…いつもの朝のように息子が学校へ出ていき、

その後に続くように

私も家を出ようとした時、家内が小さい声で言いました。

「……よろしくお願いします……」

私は何も答えずに、家内のことなどまったく気にしていない

素振りで家を出ました。

しかし、私の心の中は仕事どころではありませんでした。

あいつら、一体どこへ行くつもりなんだ、2日間も一緒に過ごして

何回抱き合うつもりなんだ…

今まで川島君と家内の行動はすべてわかっていたのに、

今日ばかりはまったくわかりません。

自分だけ除け者にされた疎外感が強くありました。

夜は息子と男二人でワイワイ言いながら食事を作ったりして、

それなりには気も紛れたのですが、一人になってしまうともう

耐えられませんでした。

とてもじゃないが仕事をする気になれない…そう思った私は、

木曜日は午後から半休を取りました。

かといってどこへ行くあてもありません。

電車に乗り家に向かって帰りかけたのですが、ふと思い立ち川島君の店に

寄ってみようと思いました。

もしかしたら…川島君がいるのではと思ったのです。

店の近くまで行き、中を覗いてみるとショールームに

店長が一人いるだけでした。

なんとなく期待外れのような、それでいてホッとしたような気持ちで

私は店に入りました。

「おやっ、上坂さんじゃないですか、今日はどうされたんですか?」

店長は私の姿を見ると慌てて駆け寄ってきました。

平日の昼間に訪ねていくことなど今までなかったことですから

驚くのも無理はないでしょう。

「いやいや、会社を早退したものでね。

近くを通りかかったんで寄ってみようと思ってね」

「そうなんですか、ありがとうございます。

川島から聞きましたけど、新車の方もお世話に

なるみたいですね」

「ああっ、もうほぼ決めたんだけどね。川島君は…今日はいるの?」

私は最も聞きたかったことを何気なく聞いてみました。

すると、店長は申し訳なさそうな顔をして言いました。

「いえ、それが休んでいるんですよ、昨日から。申し訳ございません」

やっぱりか…あいつら一緒にいるんだな…

あわよくば川島君がいればと期待した思いは一挙に崩れました。

私は残念な気持ちを顔に出さないように言いました。

「いや、いいんだ。まだ電話するから…」

「昨日は休暇届が出ていたんですけどね、

今日は急だったんですよ。朝に電話してきて休ませて欲しいって…」

そうか…ということは、今日は川島君には予定外だったということか…

「ほぅ、そうだったの。体調でも崩したのかい?」

「ええ、そうみたいで…」

私は店長に、今日来たことは川島君には黙っておいて欲しいと頼んで、

店を後にしました。

川島君の店を出た後、私は一旦家の方向に向かって帰りかけましたが、

このまま誰もいない家に帰ってもしょうがないと思い、

自然と足は家とは逆方向に向いていました。

今頃あの二人はどうしているんだろうか…

恋人同士のように二人だけの時間を楽しみ、

抱き合って身体を貪りあっているのか

川島君は昨日は休みを取っていたらしいが、

今日は急に休ませて欲しいと連絡してきたと店長は言っていた…

これは一体どういうことなのか…旅行というのは日帰りだったのか、

それともまったくの嘘なのか…それなら家内は昨日どこで泊まったんだ…

まさか二人で駆け落ちしたんじゃないのか……

私はトボトボと歩きながらあれこれと考えていました。

考えれば考えるほど頭の中が混乱し、

悪い想像ばかりしてしまっていたのです。

行くあてのない私は本屋で立ち読みをしたり、

パチンコをしたり…しかし何をしてもまったく上の空でした。

今日一日が早く終わって欲しい…もうコリゴリでした。

確か家内は夜には帰ると言っていたものの、

それが何時なのかまったくわかりません。

となると夕食の準備もしなければならず、何をする気にもなれない私に

追い討ちをかけるような嫌なことでした。

止む無くスーパーで夕食の惣菜を買った私は、

残暑が厳しい中汗だくになりながら家に向かいました。

夕食を何にするかを考えるのも面倒くさいし、

まして誰もいない家に一人先に帰って家族の帰りを待つ…

当たり前のことのようですが、家内はこんなことを

毎日しているのかと思うと、

改めて家内の存在の大きさ・有り難さを実感しました。



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妻の青春、その23、妻が家出しちゃうのか

川島君は私の話を真剣な表情で聞いていました。

「そうですか……でも……一言だけ言わせてもらっていいですか?」

「うん、なんだい?」

「僕としてはできれば言って欲しくないですけど、

ご夫婦のことでもありますし、

瀬戸さんがそうされるのならやむを得ないと思います。ただ…

…洋子さんに本当のことを言われることで、リスクを背負うのは

瀬戸さんの方ではないんですか?

こういう言い方はあまりしたくないですけど、

僕はもし洋子さんに恨まれるようなことがあっても、

所詮顧客を一人失うだけですから……でも瀬戸さんの場合は……」

自分のことより私の立場を思いやってくれる川島君の言葉に

感心しながら私は言いました。

「ありがとう…でも、それは川島君が心配しなくてもいいよ。

さすがにDVDのことまでは言わないつもりだし、

川島君のことを悪く言うつもりはないから。

すべては俺が仕掛けたことだからね」

川島君は私の顔をじっと見つめながら少し間をおいて言いました。

「…わかりました」

私は川島君と別れて、5時過ぎに帰宅しました。

「ただいま…」

家の中に入ると、家内は買い物をして帰宅したばかりなのか、

冷蔵庫に食材を入れているところでした。

「あらっ、お帰りなさい。早かったのね…」

「うん、まあ…」

私はどのタイミングで切り出すか、まだ自分の中で決めかねていたため、

生返事をしてしまいました。

いつ言おうか…いっそのこと今言ってしまおうか、

迷いながら居間のソファに座り新聞を広げていた時に

家内が近寄ってきました。

「はいっ、これ川島君から…」

家内が差し出したのは川島君が持ってきた新車のパンフレットが

入った紙袋でした。

「ああっ、そうだったな」

「後のこと、きちんとしてあげてね。

日曜日にわざわざ来てもらったのに…」

私は今だと思いました。

「洋子、ちょっとここに座れよ」

キッチンの方に戻りかけていた家内は振り返って戻ってくると、

向かいのソファに腰掛けながら言いました。

「どうしたの?改まって…」

私は心臓がバクバクして緊張しているのがわかりましたが

平静を装って言いました。

「さっきまで…川島君に会っていたんだ」

「そうなの?謝っておいてくれたのね」

「うん、謝ったよ。仕事に行く振りをして家を出て、

川島君とお前をこの家に二人きりにさせたことを…」

「えっ????…」

家内は怪訝そうな顔をして私を見つめました。

私が何を言っているのか理解できないようでした。

「あなた何言っているの…今日は仕事じゃなかったの?」

「仕事じゃないよ。これは俺の一人芝居なんだ。

お前と川島君をこの家に二人きりにさせたかったんだ」

「どうして?あなたの言っていることがわからないわ」

訳のわからないことを言われ困惑している家内をよそに、

私はまくし立てるように言いました

「俺は全部知っているんだ。川島君のマンションに食事を

作りに行ってキスしたこと、

川島君がこの家に泊まった翌日の明方に再び抱き合って

キスしたこと、そして

……川島君のマンションでセックスしたこと……全部知っているし、

すべては俺が仕掛けたことなんだ。俺が川島君に頼んだことなんだ」

「そっ……そんな……」

家内は大きく目を見開いて、凍りついたように動かなくなりました。

「……だから……二人が久しぶりに顔を合わして、

家の中で二人きりになった時、

どうなるのか試してみたかった…」

凍りついたように動かなかった家内でしたが、

私に表情を見られたくないのか、下を向いてしまいました。

泣いているのか、少し肩が震えているように見えました。

私はどう話しかけたらいいのかわからず、しばらく黙っていました。

会話のない沈黙の時間が流れていきました。エアコンをつけ

ていたため窓を締め切った居間の中は物音一つ

しない空間となっていました。

どのぐらい経ったでしょうか、家内がゆっくりと顔を上げました。

目元が潤んでいるように見えましたが、涙がこぼれるほどではありません。

家内の視線は私ではなく、テーブルの一点を見つめていました。

「すまなかったな……今まで黙っていて……」

沈黙の息苦しさに耐えかねて、私は家内に対して謝罪の

言葉を口にしました。しかし、

家内の耳に入っているのか、返事もなく視線も動きません。

私は再び言葉を失ってしまいました。

そして窓の外が薄暗くなりかけた時、ようやく家内が口を開きました。

「…やっぱり……そうよね……」

「えっ?」

私は家内が何を言っているのか、わかりませんでした。

「やっぱり………遊びだったのよね………川島君は…」

「遊びって?…」

家内は視線を動かさず、テーブルを見つめたまま言いました。

「…あなたに言われて……その気もないのに……そうよね、

そうじゃないと変だし……」

家内は川島君に遊ばれていただけと思ったのでしょうか、

私に頼まれてその気もないのに川島君は家内を抱いたと

思ったのでしょうか…

「その気になっちゃった…私がバカだった……そういうことかしら……」

私は慌てて言いました。

「そ、そんなことはないさ。確かに川島君に頼んだのは事実だけと、

川島君はお前のことを本当に……」

私の話しが終わらないうちに家内は立ち上がりました。

「さぁーて、夕飯作らなきゃね、

もうすぐ弘毅がお腹すかして帰って来るわ」

顔に明らかな作り笑いを浮かべながら、

家内はキッチンへ行ってしまいました。

失敗だったか、やっぱり一生内緒にしておくべきだったのかな…

…私は本当のことを言ってしまったことを後悔しました。

家内の本当のことを話してから2日後ぐらいに川島君から電話があり、

私は一部始終を話しました。

その気もない川島君に抱かれたと思われることは川島君に

とっても心外だったようで、

もう一度出会って話しをしたいと言ってきましたが私は断りました。

時が解決してくれるのではという甘い考えがあったのです。

その後も家内とは必要最低限の会話はありましたが、

なんとなくぎこちない日々が続きました。

一番辛かったのは家内と視線が合うことがなくなったことでしょうか。

私と話をする時も視線を合わさず話をするので、

会話をしていても心が通い合っていないというのが明らかでした。

これから自分たちはどうなるのか…

このまま殺伐とした仮面夫婦を続けるしかないのか…

身から出た錆びとはいえ、私は今後のことを考えると憂鬱な日々でした。

そして状況が急転したのは、家内に本当のことを

話してから2週間ぐらい経った日曜日の夜でした。

弘毅が2階の部屋に入ってしまってから、家内が話しかけてきたのです。

「あなた…お話があるの」

私は一瞬ドキッとしました。もしや…離婚か…まさか…しかし…

もしそうならそれもしょうがない…弘毅はどうするんだ…

一瞬の間にさまざまなことが頭を駆け巡りました。

私と家内は居間のソファに向き合って座りました。

そして、家内は相変わらず私の方は見ないで、やや下を向いたまま口を

開きました。

「今度の水曜日と木曜日……外出させてほしいの」


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