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私の知らない妻、その14、妻が離婚届けを準備いていたのです。

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私の知らない妻、その14、妻が離婚届けを準備いていたのです。

化粧箱は内側に紅色の美しいビロード地の生地が施され、

中央部分には仕切りがあり、

左右それぞれに中身を隠すように赤色と黒色のシルク地の

スカーフが四つ折にされ掛けられていました。

私はこの時、この化粧箱には妻なりの仕舞い方の暗黙

のルールがあるように感じ、慌ててメモを用意し、

左右どちらに何がどのような順序で納められているのかを

克明に記入しながら作業をする事にしました。

取り敢えず現状では、

私がこの化粧箱を開けるに至った流れを

妻に悟らせる訳には行かないのですから…。

私は左側の仕切りに被せられていた黒地のスカーフを

緊張で小刻みに奮える指先で外し取りました。

【こ‥これは!‥ 】

そうです、そこに納められていた物は先日、

妻のベッドに隠されていたあの発情した牝の印しが

ベットリと付着していたあの高級そうな黒地にシルバーや

ゴールドの刺繍をあしらった下着でした。

それらが綺麗に洗濯されキチンと折り畳まれ仕舞われていました。

更に驚いた事に、素人目にも高級そうな下着のセットが数点納められていました。

赤色、黒色、ゴールド。

それらは、まばゆいばかりの派手さと淫靡さを備え、

取り出して見ていた私は複雑な心境にならざる得ませんでした。

こんな物を着けて、あの澤田統括部長と…

朝の駐車場での出来事が鮮明に思い出され、

悔しさが沸々と沸き上がり、

その淫靡な下着を触る手にもついつい力が入ってしまいます。

私は悔しさを抱いたまま、

他に何か無いかと仕切られた箱の左側の部分を調べて見ると、

箱の隅に何枚かのタグと小さく折り畳まれたメモが

ある事を発見しました。

タグは二枚あり、一枚目のタグには聞き慣れないメーカー名が

刻まれ、裏には

【アンダー70Eカラー G 】

と記載されていて、もう一枚の同様のタグの裏には

【サイズ M カラー G】の記載がありました。

これは何か下着のタグのようです。

私は小さく折り畳まれたメモ紙を手に取り、

慎重に開き、中を確認したのです。

そこには血圧が上がり、

額の血管から血飛沫が飛び散りそうになるような文章が

記載されていたのです。

《愛する悠莉子へ 絶対似合うから今回は プレゼントしたこの下 着を

身につけて来てね 。

来週が待ち遠しい。 眠らせないよ。 》

何なんだこれは!?

私の妻に対する疑いは危険水域を越えました。

私は気持ちを静める為にテーブルの上に置いたペットボトルの

水をグビクビと飲み、手にした煙草に火を着けました。

【本当に笑えない…

離婚云々では済まさん

。あの二人をどん底に叩き落としてやる!! 】

私の憎悪に似た怨念めいた物が吐き出す煙りとともに

リビングに充満して行くのが分かりました。

私は高ぶる感情のままで化粧箱の右側のスペースに

掛けられた赤いスカーフを外しました。

そこに有った物は見た目には、

派手で淫靡な下着でも妖し気でいかがわしい物で

もないように見えました。

おそらく左側のスペースにあったタグの下着を包装してあったと

思われる下着店の綺麗なラッピング用の包装用紙と複数の封筒。

私は一枚一枚、重ねられた封筒の順序を間違えないようにしながら中身を確認しました。

一通目の封筒には産婦人科の診察券と

額面5千円程度の領収書。

二通目には、エステティックサロンの会員証と、

かなりの額の束になった領収書。

これらは妻の口から一切聞かされていない物でした。

産婦人科…何の為に行ったのか?

婦人科の具合が悪いなどとは聞いていませんでしたし、

見た目には体調が悪いようには思えませんでした。

エステティックサロンにしても一体いつ通っているのでしょうか?

この領収書の束を見る限り、かなりの回数を通っている訳です。

正に、知らぬは亭主ばかりなりです。

三通目の封筒は私の住む地方都市の役場の物でした。

私には非常に見覚えのある封筒です。

私はそこに入っていた薄っぺらい用紙を取り出して見て

愕然としました。

何とそれは離婚届けだったのです。

それも妻の記入欄には必要項目全てに記入があり、

捺印までされていたのです。

【な、な、何よ?コレは?どう言う事?】

ある意味これは、あの発見してしまった妻の牝の印しが

染み付いた淫靡な下着よりも…今朝の駐車場で見た妻悠莉子と

澤田統括部長の姿よりもショッキングでした。

これには私も我を失い、しばし呆然となり、

思考回路が全て停止してしまいました…。




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