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火遊び、その17、悪巧み


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火遊び、その17、悪巧み

先日は髪型が変わったことも気付かなかった黒川だが…

山下の言葉の影響か、この夜は些細な千絵子の変化に気付いていた…

「たまにはスカート履いてもいいじゃない、

それにどこにも出かけてないわよ、さああなた食べて」

自分がスカートを履いてることに夫が気をとめたことには驚いたが、

昼間の行動を怪しまれないよう想定した言葉で

答えながらダイニングテーブルに夫の夕食を用意する千絵子…

「そうか…」

淡々と答える千絵子に黒川は職場での同僚の山下の

目撃談を切り出せない…だが…

(そんなはずは…千絵子は出かける時しかスカートを履かないはずだ…)

黒川の中に疑念が存在していた…

「でもなあ千絵子…ほら後輩の山下っていたろ、

彼がお前を○○駅の近くで見たっていうから…」

その疑念が黒川にこの言葉を口にさせた…

「えっ」

゛夫の同僚が目撃していた゛このことが千絵子に動揺を与える…

(そんな…山下さんに見られてたなんて…でもここは…)

しかし千絵子は動揺を隠しながら答えていく…

「人違いじゃないの…私本当に今日はどこにも行ってないわ」

「本当か?千絵子がスカート履くなんて…

どこか出かける時だけじゃないか」

゛タイトスカートを履く妻゛普段とは違う千絵子の

服装が与える疑念に黒川は食い下がる…

「別に出かける時だけじゃないわよ」

「いいや、そうだ」

「しつこいわね…大体出かけるにしても私いつも車よ…

そんな○○駅の方に行く訳ないじゃない!」

食い下がる夫に動揺はしているが…後めたさからか

逆に必死に抵抗する千絵子…

「そんなにムキになって否定しなくてもいいじゃないか…何か怪しいな」

千絵子の゛逆ギレ゛気味な様子に益々疑念を抱いていく黒川…

「何が怪しいのよ…何か不愉快だわ…私お風呂入ってくるから!」

千絵子はこれ以上喋ればボロが出ると思い…゛

夫の不快な言葉に機嫌を悪くした゛という感じで浴室へ向かう…

(いい過ぎたかな…あの千絵子が浮気なんて…ありえないよな…)

浴室に向かう千絵子の後ろ姿を眺めながら疑惑から

後悔の念に変化していく黒川…

(でも何故なんだ…今日の千絵子…やけに…)

千絵子の腰から尻のラインが妙な゛美熟女゛のフェロモンを発していた…

そんな自らの身体の色気に気をとめることなく…

(いけない…つい動揺してムキになっちゃたわ…

別に達雄君とのことがバレた訳じゃないし…

堂々としてないと…本当にバレちゃうわ…)

先程の自分の態度を諌めながら服を脱ぎ出す千絵子…

夫が深く追及しなかったためか…達雄のアパートから出てきた所まで

目撃されていたとは思っていなかった…


千絵子の後に夕食を終えた黒川も入浴し、二人は床につこうとする…

(何なんだ…この千絵子の色気は…)

先程から変わらず黒川の目にする千絵子の身体は妙な

フェロモンを漂わせていた…

「千絵子…さっきは悪かったよ、なあ…いいだろ…」

ベッドの傍らで黒川は後ろから千絵子の肩に手を置き誘う…だが…

「いいのよ、あなた遅くまで残業して疲れてるでしょ?

無理しなくていいのよ、それに私も今日は疲れてるから…」

千絵子はそんな黒川の手を払いベッドに横たわる…

(ここで無理強いしても…いつもみたいに…)

一見気遣うような千絵子の言葉が…黒川には連れなく聞こえる…

自らの股間を一瞥する黒川…最近の不能気味なペニスに…

強引には千絵子を誘えず…自らも虚しくベッドに横たわる…

暫くして…黒川は先程の千絵子の言葉に引っ掛かりを感じた…

(どこにも出かけてないというのに…何故…゛

今日は疲れてるから…゛なんて千絵子は言うんだ…)

妙な胸騒ぎを覚える…

(まさか…山下が言うとおり…千絵子は大学生のアパートへ…

そしてそこで浮気を…)

なかなか寝付けない黒川…

それに対し…千絵子は夫の胸騒ぎなど関係ないように…

本当に昼間の達雄との激しいセックスの疲れからか…寝息を立てている…

(まさかな…この生真面目な千絵子が…そんなことを…)

愛しい妻の寝顔に黒川は必死に胸騒ぎを押え妻を信じようとする…

しかし…

「ん…達雄さん…」

そんな黒川の思いを…千絵子の寝言が打ちのめした…

(誰なんだ?…達雄って…どういうことなんだ…)

千絵子が口にした゛達雄゛という他の男の名が黒川の中に

疑念を再燃させた…

(千絵子を起こして問い質すべきか…いや…ただこれだけでは…しかし…)

悶々とした感じの黒川…眠れぬ夜が更けていった…

翌朝…

「いってらっしゃい」

普段通り夫と子供を送り出す千絵子…当然黒川は昨夜の寝言を

千絵子に問い質してはいなかった…

(誰なんだ…達雄って…そいつは千絵子の浮気相手なのか…

でも…あの千絵子が浮気なんて…)

通勤の電車内でも、職場の事務所内でも黒川は

悶々とし続ける…また…寝不足のせいか仕事は捗らない…

(今頃千絵子その達雄と…いや…そんなことは…)

一日中…千絵子への疑念と信頼が黒川の中で交差していた…

黒川は結局この日は仕事に対して気力が無く定時退社した…

「やあ黒川さん、珍しいね、こんなに早いなんて」

○○駅の改札を出た所で黒川に声をかける男がいた…

「あっ、どうも…」

黒川が振り帰ると太った初老の男の姿が目に入る…

声の主は隣人の徳田であった。

「何か黒川さんお疲れのようだね」

「いやあ、そんな…」

「どうだね?その辺で一杯、あっ、それとも早くあの綺麗な奥さんの

顔を見たいかな?」

「そんなことは…徳田さん行きましょう」

二人は駅前のこじんまりとした小料理屋に入っていく。

「まあ、黒川さん」

徳田が銚子を差し出す。

「そんな徳田さんから…」

差し出される銚子を取り上げようとする黒川。

「いいから、いいから」

徳田が強引な感じで黒川の盃に酒を注ぐ…

そして黒川も徳田に注いだ所で…

「ああ良かった、今夜は一人で駅前で一杯やりがてら

夕飯食べてくつもりだったんだ、ところで、

黒川さん仕事大変なのか?顔がやたらと疲れてるよ」

徳田が盃を開けた黒川に注ぎながら、

寝不足による顔色の悪さを指摘する。

「いやあ…その…仕事というより…」

「何だ?家庭の事かい?」

「まあ…そんなところで…」

「何なんだ?良かったら話してみなよ」

お互い注ぎ合いながら二人の会話は進んでいく…

「その…千絵子の奴…どうも…怪しいんです…」

「怪しいって?」

「いや…その…どうも若い男と…

その…浮気をしてるんじゃないかと…」

「ほう~それは穏やかじゃないね」

徳田を信用している黒川は、悩みを語り始める…

「昨日、同僚が目撃したらしいんですよ…

あいつが大学生のアパートから出て来たって…」



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