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させ子妻、その12、元カレさん、ご乱心








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させ子妻、その12、元カレさん、ご乱心

「あっ、課長!」

〔あっ!津村さん…どうぞこちらにお座り下さい〕

そう言うと、島田の前、課長のとなりに私を座らせました。

私はじっと島田の顔を睨み付けていました。

〔あんたねぇ、御主人に謝るのが筋だろう!なに

黙ってんだよ!〕

目の前の島田は下を見つめ、肩を落として、昨夜の

電話での威勢はまるでなく、何やらうらぶれた感じ

さえしました。

《すみません…》

聞き取れない程の小さな声です。

「あんた、俺が昨日、電話で怒鳴ったじゃないか!

なんで今日、裕美を待ち伏せたりしたんだよ!

なんの話しが裕美にあるんだ!言ってみろよ!」

《本当に旦那さんだったんですか…すみません…》

「裕美は俺に隠し事なんかしないんだよ!血迷いやがって!お前、女房、子供が

いるんだろうが!家庭までぶち壊す覚悟で

やってんのか!根性もないくせに突っ張ってんじゃ

ね-ぞ!この野郎!」

《………………………》


私は課長の前とは言え、

興奮と怒りで抑えることが出来ませんでした。

「何とか言え!この野郎」


《………………………》

〔津村さん…お怒りはごもっともです。ここは

私にお任せ願いませんでしょうか?決して、

うやむやにする事はしませんので…

私としても会社の女子社員にこんな事をした男を許す訳には

いきません。まして彼は取引先の社員です〕

私にしても、この会社の取引先です。得意先の課長に頭を下げられたら、

これ以上島田に罵声を浴びせる事は出来ませんでした。

「あんたなぁ、山内課長に感謝しろよ!課長が居なかったら、どうなってたか

わからないぞ!

課長、申し訳ありません。よろしくお願いします」

そう言って私は席を立ち、部屋を出ました。

部屋の外では妻がオロオロとした感じで、私に近寄って来ました。

『課長どうするのかしら』

「知らないよ!でも島田にとっては、大変かも知れないよ」

『大変って?まさかクビ?』

「わからないけど、課長の面子もあるからなぁ」

しかし、島田は何と馬鹿な行動に出たのでしょうか。

会社の近くで妻を待ち伏せ、

妻が素直について来ると思ったのでしょうか…

しかも強引に…そ

れを得意先の課長に見つかると言う失態まで…

血迷ったとしか思えないのです。


島田にすれば課長に見られた事が大誤算で、

その後の彼の人生は変わったのですから…

あれ以来、山内課長から何度か電話を頂き、

相手会社の島田の上司に、

強く抗議し、島田の処分を求めたそうです。

もちろん、裕美の名前を出す事なく、貴社の社員、

しかも妻帯者が、嫌がる我社の女子社員を…との事でした。

〔津村さん、これで私の出来る事はすべてやりました。

ご納得頂けないのは、重々承知しておりますが、

あまり事を大きくするとうわさに昇るかもしれませんし…〕

「わかりました。課長にお任せした以上、とやかく言うつもりはありません。

反って課長には大変ご心配をおかけしてしまいました。

本当に申し訳ありません。ありがとうございました」

私は心から感謝していました。

〔いえいえ、そう言って頂くと私も肩の荷が軽くなりました〕

結局、島田はクビは免れたものの、

地方転勤を命じられると自ら退職をしたのです。

この出来事は私達夫婦、とりわけ妻には重苦しい

思い出となり、これ以降夫婦の会話に島田の名前が出る事はありません。

『私、会社辞めてもいい?山内課長に知られたのが、嫌なの…』

「それはいいよ。でも課長から何か言われるのか?」

『今の所そんな事ないわ…でも…嫌なのよねぇ』

妻の気持ちは理解出来るのです。結婚前とは言え、

不倫していた事実を課長に知られ、島田がどこまで

話したのか気になっているです。

「あまり気にしない方が

いいよ。今の時代珍しい話でもないし…辞めるのは

構わないから、いつでも

辞表を叩き付けるつもりで課長の出方をみたら?」

『ありがとう。気が楽に

なったわ…そうよね、辞表覚悟なら何でも言えるわ』

今思うと、妻が開き直って課長に接するきっかけ

だったように思います。

妻は課長にずけずけ言うようになり、反ってそれが裕美と課長の仲を

円滑にしたのですから世の中はわかりません…

冗談まで言い合うように

なり、裕美の口から山内課長の名前がひんぱんに

出るようになったのです。

『あのことがあった頃は、課長が私に気を使ってるのがわかって、

反ってそれが嫌でたまらなかったのよ…

ミスをしても、うやむやで叱らないし、他の社員の

ミスには結構怒鳴るくせにね…

一度、課長を呼び出して、

私に気を使わないで下さいって言ったのよ…

そしたら、津村さん、僕はなにも君に気を使ってないよ、むしろ君の方が…

まぁ、お互い無意識の内にそうなっていたのかも知れないねって』

「よかったじゃないか」

『うん、あれからずいぶん気が楽になって…課長を

見直したわ。以前はただのセクハラ親父だと思ってたけど、

結構いいとこあるわ』

そして、ある日の夕方、妻から電話があり

『あなた、課長が今夜一緒に飲まないか?って

誘われたんだけど、どうする?』

「えっ!俺も一緒にか?」

『当たり前でしょ!二人切りなら私行かないわよ』

「そうかぁ、課長には公私共に世話になってるし、

いい機会だから、うち持ちで接待するよ」

『わかった!じゃあ待ってるからね!あの和食店で

いいから予約しておいてくれる?課長、和食党だから』

こうして課長と飲む事に



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