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旅館で燃える妻、その1、男はいるの

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旅館で燃える妻、その1、男はいるの

お食事はいかがでしたか?」

 気の良さそうな仲居さんが、夕食後の食器を片付けながら訊いた。

「素晴らしかったですよ、時に川魚の焼きものが」

 仲居さんは、私の答えに至極満足したように頷くと、

既に片付け終わったお膳の上で急須からお茶を注いでくれた。

「ところで」

 私は、話題を変えるように言葉を継ぎ、ちらりと妻の表情を伺った。

 妻は、お酒で染まった頬を更に赤らめ、

知らないとばかりに顔を背けて俯いた。

 私は、この瞬間が、一番緊張し、興奮するのだ。

「実は、仲居さんに相談があるのだけど」

「はい、なんでしょうか?」

 怪訝そうに小首を傾げる仲居さんに、

数枚の千円札を握らせる。

「あら、やだ、そんなにたいそうな相談なんですか?」

「あぁ、実は妻のことなんだけど}

「へぇ」

 仲居さんは、手にしたお金と、妻の顔を交互に見やりながら、

精一杯の笑顔を浮かべて頷いた。

 私は、心臓が口から飛び出さんばかりの緊張の中、

仲居さんの顔を正視し、はっきりといった。

「今夜、お客の中に、女性をさがしている人はいるかなぁ?、

その、つまり、夜の相手を務める女性を探している男性客の

ことなんだけど」

「へぇ」

 仲居さんは頷くと、指を繰りながら、

「そりゃ、今夜はどこやらの建設会社の慰安旅行やら、

お仲間さんで来てくださっている男性の

団体さんなどがおりますから、

中にはそのようなことを頼まれることんもありますけど」

「そうか、もしそのようなお客がいたら、

妻を紹介してもらえないかな」

「え?奥様を?」

 さすがに眼を見張る仲居さんに、

私は精一杯の笑みを見せて言った。

「いや、決して売春とかではないんだ。

だからお金は要らない、実は、

私が事故にあってから、夜の方は丸きりで、

妻に不自由させているものだから、

今日のように羽を伸ばしているときに、

少しでも妻を楽しませてあげようと思ってね」

 真っ赤な嘘である。

しかし仲居さんは私にすっかり同情したようで、

「そりゃ、おつらいでしょうねぇ」

 と言うと、

「まっ、お約束はできませんが、こ

れから回るお部屋の方々にお伺いしてみますが」

 と口ごもり、もう一度「へぇ」

 と妙に感心したように言うと、こちらは女同士の波長なのか、

驚くほど無遠慮な視線で妻に視線を移していった。

「ただいまの、旦那さんのお話どおりにして、よござんすね」

「よろしくお願いします」

 消え入るような声で答える妻に、

仲居さんは先ほどまでの温和な笑顔を拭い去り、

まるで置屋の女将さんのような笑みを浮かべ、

妻に向き直った。

「よろしいですか、私どももお客商売でありますから、

紹介した手前、土壇場になって嫌では困りますよ。

それと、トラブルも困ります。参考のためにお伺いいたしますが

、どのようなご条件の男性をお探しになったらよろしいですか?

こちらではお座敷ストリップから、夜のお相手を務めるまで、

色々ございますからねぇ」

「それならば、夜の相手だけでお願いします。

こちらからお部屋へ行かせますので、

例えばそのお相手が四人部屋ならば、四人相手でも構いません。

ただし、避妊だけはきちんとして頂ますが」

「よござんす、それではしばらくおまちくださいね」

 仲居さんは言うと、食器の乗った盆を持ち上げ、

「本当によろしいですね?」

 と念を押し、部屋からでていった。 





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